悠のおはなしのおはなし

全く新しい遊び方 〜 IxShe Tell

はじめに

この記事は割と普通のレビューっぽいもので、ネタバレ成分が非常に多いですから、これからプレイしようと思っている方は注意してください。

あ、でも、キュンポイントの話だけ読んでおくといいかもしれません。

タイトルの話

“IxShe Tell”というタイトルですけど、SMEEもそうですが、タイトルから得られる作品の情報量が皆無ですね。

ざっくり言えば、主人公が5人の女の子から言い寄られて誰かを選ぶお話です。

キュンポイントとおかわりイベント、このゲームの遊び方

このゲームには特徴的な3つのシステムがあります。

  • キュンポイント
  • おかわりイベント
  • 視点切り替え

これらが「用意されてるけど無意味」という批判があるのですが、実はこれによってものすごく画期的な遊び方ができるようになっています。

それは、「主人公と同じ目線で悩める」ということです。

エロゲーでは主人公がモテモテというのは何も珍しくありませんし、選び放題の中からちゃんと選ぶ、というのも珍しくはありません。 が、この場合でもプレイヤーとしては誰を攻略するかを決めてストーキングするのが基本であり、追いかけられる立場であるはずなのに、プレイヤーとしては結局追いかけることになります。

しかし、このゲームにある「キュンポイント」と「おかわりイベント」、そしてルート分岐システムは、初プレイ時に、ヒロインを決めることなく、主人公と同じように悩んで、そして誰かを選ぶ、ということが可能です。

キュンポイントはチャプターごとに10ポイントあり、ヒロインに振り分けることができます。 これがどうなるかというと、ルート分岐時に、

  • 〇〇に告白する
  • もう少しよく考える
  • 誰にも告白しない

の三択になります。この、「〇〇に告白する」がキュンポイントが最も高いヒロインであり、普通に進めながらキュンときたときにキュンポイントを振り分けているとそのヒロインに告白するという選択肢が提示され、自然に告白に進むことができます。多くの場合、とても納得できることになるでしょう。

考える、を選んだ場合は他のヒロインになりますが、これもキュンポイント順。

おかわりイベントは単純にヒロイン個別のエピソードを見るだけのものであり、ヒロインからすれば「選んでもらったことでキュンポイントを稼ぐチャンスが増える」みたいな漢字になります。

攻略には関係しないので、特定ヒロインを追いかけなきゃという必要は特にありません。展開も、連続で選んでも特に変化しません。

視点変更は2回しかチャンスがありませんが、要は物語全体としては各ヒロインの視点でどのように考え、どう行動したかというのを含めて完成形なのですが、全員分ストーリー中に挟むとつながりが悪いので、2週目以降に見ないで主人公視点で進めていくという遊び方ができるようにするもののようです。

とにかく一回目はヒロインを決めずに自分の心のままに進めるのがよさそうです。

ちなみに、私は共通4まで香純を追いかけて、あまりにも栞織だったので、栞織で共通5まで進め、香純を共通5まで進め、香純で告白まで行って栞織に告白した(キュンポイントが栞織が一番高かった)という進め方になりました。ある意味正しい?

音楽がいい

BGMはSONO MAKERによる幅広い音楽性の楽曲で、基本的にはお約束を共通踏襲したものです。

ですが、BGMとして非常にうまく溶け込んでいて、本当に素敵。全く邪魔にならない素晴らしい音楽ですね。

上手なキャラクターづけのヒロイン

香純はちょっと癖が強いですが、どのキャラクターも味付けは控えめながら非常にいい味が出ています。

栞織はなんとなく暴力ヒロイン、あるいはヤンデレっぽいキャラクターの演出を受けていますが、実際は控えめ大和撫子。主人公に対しては割とはっきりしたしっかりものの良妻という感じで、ストーリー的にもそんなお話ですね。 他のヒロインのルートでも諦めない唯一のキャラクターで、なおかつ他のヒロインのルートでも最も主人公を支えるキャラクターです。

芳乃がおそらく最もキャラクターの立っているヒロインで、ポンコツツンデレでありながら頭がよくてデキる女というキャラクターは珍しい気がします。 アフターを含めて芳乃は基本的にいい女。交際としても最も自然というか、一番重さがない感じですね。 どのルートでも出番がおおく、主人公の頼れる相棒という印象が強いです。 ルートに入ると我慢できない系女子という新しい属性に開眼し、アフターでも我慢できないっぷりに磨きがかかっています。

彩楓は、振れ幅が大きいというか、チャプターによってどんなキャラクターかというのがものすごくブレブレです。 そういうところがかわいいポイントだと思うのですが、アフターではすっかり余裕あるお姉さんになってしまって醍醐味が味わえませんでした。 私としては、惚れ直して崩壊したときの彩楓が一番かわいかったんじゃないかなぁ、と。

あと、彩楓に関しては、そもそも告白時に主人公の肩書が目当てだったわけで、交際に至った時点でベタ惚れなのですが、おかわりイベントを見ても好意を持つ過程がなく、ちょっと「???」となりました。

由依は年下だけどとてもしっかり者というちょっと珍しいキャラクターですね。 栞織も芳乃も由依も「しっかり者のいい女」なので、その違いを説明するのが難しいです。強いて言うなら、栞織は「良妻タイプ」、芳乃は「仕事ができるタイプ」で、由依は隙なくスペックが高いタイプ。

そして萌楓ですよね。

ビジュアル的には一番かわいいと思いますし、子供っぽさが前に出るしっかり者、という他のヒロインと並んで違和感の全くない属性持ちです。 が、攻略対象ではなく、サブヒロインですらないあくまで脇役。アフターの特設サイトで主人公に片思いするショートシナリオが2本載ったことを考えても、萌楓ルートがほしかった人は多いのでは。 私としては、彩楓ルートのかわりにほしかったくらいです。

ついでに、主人公の髪型が演説時と他の絵で違うのが気になります。

起伏は少ないけれどバランスの良いシナリオ

プロローグが5(共通シナリオ2本分くらい)、完全に共通な共通シナリオが5、固有のおかわりイベントが各4、固有の告白シーンが各1、ルートはエピソードが9とエピローグ、エピローグ相当のノーマルエンド、という内容で、全オートでのプレイ時間は共通を飛ばさない場合でも30時間行かないくらい。

スタート時点でプロローグを飛ばせること、経過が攻略には関係ないことから、セーブスロットは190ですが、実際に必要なセーブスロットは共通の5、おかわりイベントと告白前で5、ヒロインのルートで10*5、と60で全エピソードの頭出しができてしまうコンパクトさです。

ヒロインのエピソードはエピソードごとにボリューム差がかなりあり、おそらくエピソード4までが短い栞織が最も短いでしょう。

ただ、エッチシーン数が3でシチュエーションも5と最近のエロゲーでは珍しいくらい少なく、おかげで割と短いシナリオも気にならず、お話のバランスも良いので満足感があります。

ちなみに、eスクールライフだと

本作のヒロインはHシーンの割合が前作(IxSHE Tell)と比較して1.3倍になっており、準ヒロインはヒロインの新基準の半分となっております。

とか書いてあるんですが、つまり4シーンですね。別に多くはないどころか、最低限。サブヒロインは2。サブヒロインとしても少ないという。

アフターは2人に3シーンあるんですが、1シーンは2人ともグラフィックは使い回し。リソースが足りないのかな…

とてもよかったです

書いてみたら書くことが「キュンポイントで感動した」ってことくらいしかなくてちょっと困ってしまったのですが、非常に良い作品でしたよ。アワードを獲ったらしいのですが、それも納得の、佳作でした。

キュンポイントは、本当はもうちょっと展開に影響する予定だったっぽいですけどね。

総じてありがちな、ダレるとか、余計な話をつっこまれるから集中できないとかいうのがなくて、HOOKSOFTもSMEE同様に純粋に恋愛を描く方向性なんだなぁということを感じました(HOOKSOFTブランドの作品は私はこれがはじめて)。 香純のシナリオはちょっと後味悪いというか、結果的に香純のキャラクターがエピローグで大きく変わってしまうことになるので、ちょっとどうかなぁ、と思いましたけど。

ただ、Sugar*Styleに見られたような細かなギミックやテクニックは使われず、Making*Loversのように非常強い特色があったわけではないので、絶賛するポイントに乏しいんですよね。 でも、ドラマチックなストーリーを用意する、評価の高いエロゲーと比べても私は好きでした。

ここまで純粋に恋愛を書く、ヒロインの可愛さを描くっていうのはエロゲーならではだなぁ、と思ったりしますし、すっごい贅沢。